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しまむらかずおが描くつれづれ(その13)  第61話~第65話

第61-65

 

 

第65話 「リレー」  by しまむらかずお

 

 

先週末、「リレー・フォー・ライフ in KOCHI」に参加した。

「カノンズSP」の仲間と一緒に、約50分のライブでの参加だった。

大会のテーマ・ソング「ひかりのカノン」のほか、

全7曲を演奏して、歌った。

 

8年前の第1回は、高知大医学部のグランドで開かれた。

…その半年ほど前のこと。

市内のレストランに4人が集まった。

「とにかく来てみて」と連れて行かれた感じの

「会」とは言えない集まりだった。

後に主催者の中心人物となるYさんと、Kさん、Tさんと、私。

私はそこで初めて、「リレー・フォー・ライフ(リレ・フォー)」の言葉を知った。

 

そのYさんは熱っぽく語った。

ご本人も、がんのキャリアだった。

彼女の口から、「アメリカで生まれたイベント」であること。

がんと闘う人たちを応援する催しであること。

「ルミナリエ」というローソクの灯りの中を24時間歩き続けること。

その年は日本の4か所で開かれること。

その5か所目に名乗りを上げて高知でやりたいこと。

それらが矢継ぎ早に語られた。

 

「しまむらさんは舞台とかイベントに詳しいでしょ」。

それがそこに呼ばれた理由だった。

広いグラウンドを借りて、舞台も組んで、

様々な出し物や演奏が行われるが、

どんなにすればいいか、何が必要か。

経費はいくらかかるか、など、

それもまた矢継ぎ早に問われることになった。

 

雲を掴むようなお話で

見当もつかなくて困っていたが、

話しているうちにその企画の主体者になってしまっていた。

 

で、ふっと訊いてみた。

イベントのテーマカラーはあるの?

…「紫」がテーマになってる。

じゃあ、テーマ・ソングとかはあるの?

…そんなものはないと思う。

イベントに統一感を持たせて盛り上げるためには

あった方がいいと思うよ。

…じゃあ、しまむらさん、作って。

またもや、簡単に大変なことを引き受けてしまう私だった。

 

Yさんは一枚の写真を見せてくれた。

白い袋の中に灯されたローソクの灯りが

列をなして並んでいる写真だった。

…この間を歩くの。みんなで。

テーマ・ソングのヒントはそれだけだった。

 

夜も更けて、帰路についた。

車に乗ってほどなく、歌が出てきた。

「今日もまた、白い雲流れ…」

「陽は昇り、また沈む…」

「ひたすらに繰り返す波の、たゆみない姿が愛しい…」

 

歌のテーマは「生きること」そのものだった。

「生まれて、生きて、出会って、愛して…」

「夢見て、笑って、つまづいて、泣いて…」

「私の命は誰かの贈りもの」

「光をつないで確かに生きたい…」

Yさんの深いお話をいっぱい聞いた後だったからだろう、

すらすらと、言葉はメロディを伴って溢れて来た。

 

この歌は後に、輪唱のカタチで仕上げてゆくことになる。

歌のうえでも「つなぐ・つながる」を意識したからだ。

輪唱のことを「カノン」というのだ。

テーマ・ソング「ひかりのカノン」の誕生である。

「ひかり」とは、希望や未来を意味している。

 

「歌、出来たよ」と、Tさんに電話したら、

「すぐに聞きたい」と飛んで来てくれた。

私は彼女の前で、大いに照れながら、ギター一本で歌ってみせた。

「しまむらさん、いい! すごくいい!」彼女は真顔で言った。

「CDにする」と言ったのは彼女だった。

「えっ?」と私。

「今、僕はバンドもしてないし…」

そう、当時、私はもっぱらソロで活動していた頃だった。

「私が何とかする!」…いつも温和な雰囲気の彼女は

その時ばかりは、何だか決意に満ちて、たくましく見えた。

 

その数日後、そのTさんから連絡が入った。

メンバー集めました。スタジオも借りました…。

「やりましょう」と。

 

街なかのビルの地下、薄暗いフロアに

初めての顔があった。

ベースの野村さん、ギターの清川さん、録音の浜田さん。

彼らは既に、私の歌を聞かされていた。

「さて、どんなにします?」と聞かれて、

「どんなに?って言われても…」と私。

とにかく一緒にやってみることにした。

レコーディングは初めてではないが、

なにさま大昔のこと。何だか勝手が違う。

しかも、いつも一緒にやっているバンド仲間でもないし、

大いに戸惑った。

それでも、「このカノンのところは、子どもたちの声が欲しいね」とか、

「やっぱりピアノがあるといいよね」とか、曲に対するアイデアは出た。

とにかく、その元音(もとおと)となる録音を目指したが

うまくいかず、後日を約束して解散となった。

 

次の録音まであと数日となった日。

兵庫県の芦屋市で、リレ・フォーが開かれるというので行かせてもらった。

立派な陸上競技場。

色とりどりの服装で集まった大勢の人たち。

各チームはタスキをかけてゆったりと陸上コースを歩いている。

その外側の芝生には、それぞれが持参したテントが立てられて、

呑気にバーベキューも行われている。

そんな「ゆるーい」雰囲気に驚いた。

でもそれが何だか「アメリカン」な感じで、オシャレな感じもした。

芦屋はやっぱり都会だった。

高知で出来るだろうか…ものすごく心配になった。

 

舞台での出し物が始まった。

大勢の人たちのゴスペルだった。

この集いに似合ってる気がした。

舞台の前に群れをなす訳でもなく、

淡々と出し物が続いてゆく。

大会のテーマに直接つながるような歌も音楽もなかったが、

ゆるやかな感動があった。

 

やっぱり、来て良かった。

私が持っていた「がん」への重たいイメージは、

払しょくされた気がした。

「共に歩く」「共に生きる」…

それでいいのだ。そこから始まるのだ。

 

本格録音の日を迎えた。

市内のプロダクションから子どもたちにも来てもらって、

「カノン」の練習のあと、録音を終えた。

子どもたちの声が入って、この曲は命を持った。

その後、里帰りした「樹奈」さんの流麗なピアノと、

奇麗なソプラノの声が入って、CDは完成した。

 

CDジャケットには、小さな手と母親の手が結ばれた写真。

この時のネームに初めて「KANON‘S-SP」と記された。

「カノン」の綴りは、本当は「CANON」なのだが、

それでは、カメラ・メーカーの「キャノン」になるので、造語とした。

「SP」は、「スーパー・プロジェクト」。

この曲のために、わざわざ集められた人たち、との意味だった。

それが今の「カノンズ」へとつながるのだった。

ベースの野村さんとは、それ以来のお付き合いである。

 

以来、丸7年。8回目となるリレ・フォーに、

カノンズと一緒に今年も参加できたこと。

実に幸せなことだと思う。

 

高知大学の農学部のグラウンドには、

色とりどりのテントが立てられ、

おそろいのTシャツを着た大勢の人たちが

ルミナリエの間を歩いている。

中にはのぼりを肩にかついでいる人もいる。

みんな何だか嬉しそうだ。

8年前に見たリレ・フォーの景色が

今や当たり前のようにそこにあった。

 

1985年にアメリカの一人の医師からはじまったこのリレー。

30年たった今、世界25か国、約6000会場で開かれている。

日本では昨年、43か所で開かれ、約8万人の参加を得て、

「がんに負けない社会づくり」が進められている。

 

わが国では、2人に1人ががんにかかり、

3人に1人が、がんで亡くなっているという。

私の友人にもたくさんの「サバイバー」がいらっしゃる。

ものすごく身近かにあって、決して他人事ではない。

 

このところ、その「存命率」は、飛躍的に向上していると聞く。

いつかきっと、新薬や治療法が開発されて、

がんが「ちゃんと直る普通の病気」となるまで、

多くの人たちの努力は続き、命のリレーは続く。

 

私もそのバトンをつなぐ一人でいたいと思う。

(2015.10.13)

 


▼エッセイへのご感想をお書きください。

(注)文章の内容がこの欄にふさわしくない場合には、掲載しない場合があります。ご了承ください。

コメント: 4
  • #4

    フェアリー (金曜日, 16 10月 2015 00:13)

    高知のリレーフォーライフの歴史に島村氏あり!
    だったんですね。
    カノンズの誕生と共に
    とても興味深く読みました。

    「癌」という病気は本当に他人事では無くて、私も俗にいう
    「癌」家系です。
    一年と宣告された母は、
    五年 生きました。
    その間自分らしい生き方を
    思い描き
    一生懸命生きました。
    気がつくと
    母の周りで、たくさんのお医者さん、看護士さんが闘ってくれていました。
    挫けそうになる私の周りには、たくさんの暖かい人々が居てくれました。
    その時の感謝の思いと、
    医療に携わる方々の努力によって、治る病気が増える事を祈って
    今年も歩きました。

    私も「共に歩く」「共に生きる」

    バトンをつなぐ一人になりたいです。






  • #3

    土佐のおんちゃん (木曜日, 15 10月 2015 18:15)

     思い出します、数年前のリレーフォー・ライフの白い袋のキャンドルメッセージ。
    ”うどんはのど越し、バレーは足腰”一年間このネタで笑わせていただきました。

    その後「サバイバー」として、3年が過ぎ・・今年もリレーフォーライフの時期が来たのですね。
     サバイバーのみなさん、これからもにこやかに・・ひかりのカノンを聴きながら。

  • #2

    sakura (水曜日, 14 10月 2015 23:01)

    人の命は
    この世で一番尊くて
    でも、儚くて
    必ず 終わりは来てしまう。

    だからこそ
    今、生きている事の喜びを
    出会えた事の嬉しさを
    心、穏やかに
    素直に口に出来る
    「.光のカノン」
    大好きです。

  • #1

    ムーン (水曜日, 14 10月 2015 00:10)

    エッセイを読み終えて、いったんスマホを机に置いて、目をつぶりました。
    そして、ふーっと、息を吐き出しました。

    そしたら、私の周りのサバイバーさんたちの、超越したような穏やかな笑顔が浮かんできました。
    頭の中のBGMに、「♪ひかりのカノン」が流れながら(*^_^*)

    「♪みんなが主役の、大切な人生〜。光を合わせて、みんなで歩こう〜♪」

    「♪ひかりのカノン」、いい歌ですねぇぇぇ。

 

 

第64話 「ふたつの月」  by しまむらかずお

 

 

先日、お月さまの話をしたが

その中で、「こちら、半月になりまーす」とオチを書いた。

その後、気になって仕方がないことがある。

 

この半月っていうのは、文字通り半分になった月。

だが、この半月にはふたつの名前がある。

「上弦の月」と、「下弦の月」。

その昔、吉田拓郎が歌った「旅の宿」というヒット曲に

こんなフレーズがある。

「♪上弦の月だったけ、久しぶりだね。月見るなんて…」

それでは、問題です。

今見えている半月は、上弦、下弦のどっち?

…それが気になってしょうがないのだ。

 

実は、私は高校の時に弓道をやっていた。

3年生になってからの、ほんのちょっとの間だったが、

それまでにはなかった弓道部を立ち上げて

弓を引き、的を狙っていた。

その姿勢や所作の様式美が好きだったのだ。

 

就職したばかりの頃、職場の先輩に無理やり誘われて

勤労者弓道大会なるものに出場した。

公式戦は初めてだった。

にもかかわらず、三人一組の団体戦で、私は「大前(おおまえ)」の位置

…ずらっと並ぶ選手たちの一番前で、一番先に矢を放つという、

めちゃくちゃ緊張するポジション。

すぐ目の前には、審査員の偉い手さんが難しい顔をして見ている。

責任も重大で、弓を引く手がプルプル震えた。

 

そんな中で、決勝リーグに進んで、四射中、三射的中。

なんと器用なアタシ。やったもんである。

お蔭でうちのチームは第三位に輝いた。

その打ち上げで、美味しい料理とお酒をたらふくご馳走になった。

ああ、いい思い出だあ。

その後も何度も試合に誘われたが、

音楽に走ってそれっきりとなった。

 

ま、そんな思い出話はともかく、

何が言いたいかというと、

半月の月を「上弦・下弦」の月というのは、

弧を描く弓と、ピンとはった弦(つる)

そのカタチに見立て、そう呼ばれているということなのだ。

 

そこで、弓を良く知る私は、

半月の直線が、上にあれば「上弦」、

下にあれば「下弦」…と、思っていた。

にも関わらず、それが違っていたのだ。

あの中秋の名月の後の半月は

下に弧があり、上が直線。

なのに「下弦の月」だって、いうのだ。

弓道出身者の私にとっては、

はなはだ納得がいかねえ。

 

調べてみたら、満月に向かう半月を「上弦」、

新月に向かう半月を「下弦」というのだそうだ。

…弓と弦との関係からいうと、やっぱり納得がいかねえ。

 

そこで、さらに調べてみると、

月が西に傾いた時に、弦の部分の直線が上にある、

それを「上弦の月」と呼び、

同じく、弦の部分が下にある月を「下弦の月」という…んー、なるほど。

でも、分かりにくい。

西の空に傾くまで分からんのかい!

 

で、分かりやすい解説はこうだ。

南を向いて、月の軌道を見れば

東から西へ、要は左から右へと動いてゆく。

その進行方向に円弧があれば、満月に向かう月で「上弦」。

その逆だと、新月に向かう月で「下弦」。

ま、「上り」と「下り」と思えばいいのだ。

要は、円弧の部分が進行方向に対して正・逆かどうかを

見ればいいのだ。

 

ああ、すっきりした。

とはいえ、絵に書いたり、映像つきで説明すれば

さっさと分かることでも

こうして文字だけで表すのは、骨が折れるものだとつくづく思う。

分かっていただけただろうか、ちょっと心配である。

他の人に分かってもらえる伝え方、

それはいつでも難しい。

歌で伝えようとする私には、いつまでたっても大きな課題である。

 

それはそうと、「ふたつの月」のタイトルで書き始めたのには

もうひとつ訳がある。

実は昨日、今度のリサイタルの「上演台本」を書いていた。

照明、音響、舞台進行の担当者に渡す、細かな台本である。

仕込みからリハーサル、本番での動き、

曲の流れや間奏のプレイヤーの表記に至るまで

細かなガイドつきの台本である。

 

ページ数にして、10ページほどで、フルカラー、

ギッシリと細かい文字で埋まってしまうもの。

それらはパソコンによる作業だが、

夜も更けて、ちょっと疲れたなあと、ベランダに出た。

隣家の屋根との間の狭い夜空は明るかった。

例の半月になった月が照らしていたのだ。

 

その月がなんと二つあったのだ。

ドキッとした。すげーショックだった。

目がかすんだのか、安物の老眼鏡を使い過ぎたせいか、

二つの月は、円弧を下にして、

まるでお椀を積み重ねたみたいに輝いていた。

何かホラー映画のシーンのようだった。片方ずつの目で見てみた。

片目でも二つに見える。

もう一度両目で見た。

ぼんやりとかすんだ二つの月…

 

慌てて、薬箱を探って

ロートと書いた目薬を見つけ、

点眼しにくい細い目に何滴も垂らし

瞼を閉じて、その中で目をグルグルと回して

いっぱい泣いた子どものように、タオルで拭って

再度、外へ出た。

 

目薬は効いた。

空に輝く月は、今度はくっきりと

二つに見えた。

 

…乱視かあ。

メガネ屋さんに行くかあ。

  (2015.10.5)

 


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コメント: 4
  • #4

    ムーン (月曜日, 19 10月 2015 00:32)

    今宵、ゴンドラのような三日月を見上げながら、
    「あれ?、結局、上弦の月、下弦の月、どっちがどうやっけ?」
    と、思いながら、このエッセイに、オベンキョーに戻ってきました(笑)
    あぁ、そうかぁ、、、、思い込みって、なかなか打破できませんねぇ(^_^;)
    また、半月の夜に、空を見上げながら、エッセイを読み返してみますね(*^^*)

  • #3

    土佐のおんちゃん (火曜日, 06 10月 2015 15:14)

     酒場にて、成人を迎えた息子に、オヤジさんが、
    「息子よ、これからお前もお酒を飲むことが多くなるが、あそこのカウンターで飲んでいる二人ずれが四人に見えるほど飲んじゃだめだぞ。」
     すると息子が
    「おとうさん彼は最初からひとりですよ。」

    夜にともなれば、月をめでて、秋風に吹かれ、ムーンライトのなかでつづるエッセイ、
    さすが高知の吟遊詩人かずおちゃん・す・て・き・。




  • #2

    フェアリー (月曜日, 05 10月 2015 23:12)

    え〜(>_<) そういうオチ⁈
    早くメガネ屋さんに、行ってくださいね。
    それにしても、部活を立ち上げてまで、弓道をしていただなんて
    初耳です❗️ホントに器用ですね。
    なんでも出来ちゃう。
    今回も上弦の月、下弦の月の違いを教えてくれてありがとうございました。
    さすが、語彙の豊富なKAZUOさん
    良く分かりました(^_^)v

  • #1

    ムーンムーン (月曜日, 05 10月 2015 10:25)

    最近、夜空の月を見上げることの多くなった私。
    ちょうど、昨夜も半月を見上げたので、瞼の中に映像クッキリで読ませてもらいました。

    私も、「上弦の〜月だったね〜♪」と、『♪旅の宿』のフレーズが頭の中を流れながら見ていました。
    ぼーっとですが、しまむらさんと同じ解釈していたような気がします。
    なるほど、ガッテンガッテンです(笑)

    密やかな月に憧れながら、、、、。
    形を変える月を真似て、名前を変えて投稿しますね。

63-シレット


第63話 「シレット」  by しまむらかずお

 

 「シレット」…最新型のトイレット、

ではなくて、「素知らぬ顔して」とか、

「何事もなかったかのように振る舞う様」をいう。

この「しれっと」は、このところ良く耳にする言葉だが、

NHKのニュースでは、

「昨日、誘拐の容疑で逮捕された〇〇は、しれっとした態度で…」

などとは言わない。

けれど、その他のバラエティ番組などでは、最近よく使われている。

 

多分、今風の新語だろうなあ、と思い、

電子辞書をめくってみると、なんと、しれっと出ているではないか。

いつの間にか、しれっと市民権を得ていたのだった。

元は博多弁なのだそうだ。

「しゃあしゃあと…」との訳がついている。

原語は「白っと」とのこと。

へえー、そうなんだあ、とまた新しい知識に喜ぶアタシ。

 

ま、何事も気にせずに、

何があっても動じずに、平然としていられるお方って、いますよね。

なんでそんなに、しれっとしていられるのか。

ちょっと憧れてしまいますねえ。

内閣の頂点にはそんな方が鎮座されてますよねえ。

誰か、替わってやろうという猛者(もさ)はいないのかい。

または、きっちりと諭してあげるような賢者はいないのか。

と言いたくなるほどなのに、今は、「これからは経済対策です」って

しれっと仰られておられます。

 

この「しれっと」は、新語ではなかったけれど、

このところ、若者たちの「言葉」の使い方には首をかしげるのが多い。

「ヤバイ」もそのひとつ。

広辞苑によると、「都合が悪いこと、危険なこと」とある。

ならば、「あの店のカツ丼はヤバイ!」は、毒入りか、ってことになるのだが、

「美味しくてたまらない」という意味に用いられる。

どっかの外国人タレントが叫ぶ「ジャパニーズ・ピープル、ホワーイ!」だ。

 

もうひとつ、「ぜんぜん、大丈夫です。」が気に入らない。

「来週の土曜日、空いてる?」って聞いたらこの答え。

しっくりこない。

だいたい文法的におかしい。

「全然…」とくれば、その後に否定形の「~ない」とか「ありません」が来ないと

文章が成立しない筈なのだ。

なんだか気持が悪い。

 

それから有名なコーヒー店で、

注文された品を差し出して、

「こちら、コーヒーになりまーす」ってヤツ。

思わず、「これからコーヒーになるんかい!」と叫びたくなる。

「♪どれだけ待てばいいのですかあ~」と歌いたくなる。

 

続いて、コンビニ… 何だか、ブータレ漫談みたいになってるけれど…。

来店者の顔も見ずに、「いらっしゃいませこんばんわ」との決まり文句を、

低―い声で言われるのも気に食わないが、

支払いの時、お金を出すと、「2千円から、いただきまーす」と言われ、

こちとら、「2千円から?  あと、どれぐらい出せばいいんじゃい!」と

ツッコミたくなる。やや不快。いつも不快。

 

あえて言わせていただければ、私はソング・ライター。

どれだけ、言葉を選び、自分の思いにピタリとくる表現をと、

日々、探しているか分からない。

加齢は、その言葉から古びて来る…

私はそう思っている。

だから、今風の表現がなされる若者言葉やその言い回しにも、

進んで馴染んで行きたいとは思っている。

だけど、気のない言葉、マニュアル言葉では、心のどこも動かない。

無論、歌にはならない。

 

正しい日本語を使え、と言うのではないが、

要は「語彙」が少なすぎるのではないかと思う。

言葉が豊かでないと、細かな心情も景色も伝えられず、

誤解されたり、怒りを買ったり、傷つけたりしかねない。

逆に、相手もそうだと、キレてしまうかも。

「もっと本を読め!」、そして、

「しまむらかずおの歌を聴け!」(笑)と言いたい。

 

今夜は、スーパー・ムーンだったが、

残念ながら、雲が多くて見られなかった。

でも、明日の夜、しれっと出るかもしれないから、

「ぜんぜん、大丈夫でーす。」

でも、ちゃんと見ておかないと、そのうち、

「こちら、半月になりまーす。」

 

…それにしても、もうすっかり、

秋だねえー。

(2015.9.28)

 


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コメント: 10
  • #10

    ムーン (日曜日, 04 10月 2015 22:25)

    しまむらさん、朝夕は冷え込みますが、喉も体も大事にされてくださいね。

  • #9

    カノン (金曜日, 02 10月 2015 15:19)

    KAZUOさん
    歌う事が大好きなKAZUOさんが
    嬉しそうに歌う姿を観るのが大好きなので、どうか 無理をしないでくださいね。
    10月も11月も12月も楽しみにしてますから(o^^o)♪

  • #8

    フェアリー (金曜日, 02 10月 2015 12:03)

    大丈夫ですか?
    秋のコンサートも楽しみにしてますが、その前に風邪を引いちゃった様子が見えたり
    緊急決起集会があったり、
    “独唱ライブ”を、計画中だったり
    ファンとしては、
    嬉しいドキドキ
    心配なドキドキ
    大変です(>_<)

    プロ根性のしまむらさんは、
    そんな日を楽しみに
    しれっと舞台に立つのでしょうが
    どうぞ 息の長いソング・ライターでいて下さいね♪

  • #7

    kazuo (金曜日, 02 10月 2015 11:50)


    私も、しれっと(笑)、コメントを寄せてみますね。

    みなさーん。いつも私の、どうってことないエッセイに、
    ぶら下がりコメントをいただき、感謝しております。

    このところ、新しいメンバーの登場もあり、嬉しく思います。
    それぞれの、深い、浅いコメントを楽しく読まさせていいただいております。
    私にとっては、書く「張り合い」が増します。ありがとうです。

    もう、すっかり秋の空気で、
    夜の空を見上げ過ぎたせいか(笑)、
    風邪を引きかけてしまい、ちょっと安静中です。
    とはいえ、保温してたっぷり寝たので、
    大事に至らず、もう大丈夫です。

    それにしても、最近なぜか、歌が歌いたくてたまりません。
    ライブがやりたくてたまりません。
    何のことはない、言わば「本職」なのですが、
    これほどまでに、歌いたいと感じるのは何故なのでしょう。
    よく分かりません。
    秋だからでしょうかねえ。

    10月23日のリサイタルもあり、
    カノンズの練習も、きっちりやっているのですが、
    その週イチでは物足りません。
    そこで、新たに11月に、「独唱ライブ」を計画中です。
    直近では、10月6日には「緊急決起集会(笑)」で
    歌えるのがとっても嬉しい私です。

    みなさん、こんな私ですが、
    今度ともどうぞ、よろしゅーお願いします。
    このページをご覧になっているあなた、
    初めての方を含めて、何でもいいから、短めでもいいから、
    コメントをお寄せください。

    ちゃんと目を通していますから。
    この細い目で(笑)

  • #6

    スーパームーン (金曜日, 02 10月 2015 06:06)

    土佐のおんちゃんのコメントのラストにドキッ(^_^;)
    心淋しいと口寂しくなるのかよく食べて、私の顔もスーパームーンになりつつあります(笑)

    太った感もあるので、ごぶさたの方に「シレット」会いにくくて、躊躇を続けています(^_^;)
    なぁんてね(^_−)−☆

  • #5

    土佐のおんちゃん (木曜日, 01 10月 2015 11:29)

     在りし日の、有名な漫才師”人生行路”をおもわせる、流れるようなテンポの
    のり突っ込・・責任者呼んでこ~い・・と思わず叫びたくなります。
    相変わらずの・テンポのいいエッセイで気持ちよく拝見いたしました、ありがとうございます。
     ちなみに、食欲の秋なのか近頃妻のお顔が”スーパー・ムーン”なり。

  • #4

    sakura (水曜日, 30 9月 2015 06:29)

    スーパームーン1日こけ(?)
    見ましたよ。
    明るいですね。
    月を久しぶりに“ガン見”しました。

    お月様ってこんなに明るい時があるんですね。
    太陽はしれっと輝くのに、
    なんだか月は“今だ!”って輝いている様に見えました。

    そんな時はしっかり見てあげなくちゃ。

    肌寒くなった風に
    秋を感じながら…

  • #3

    ムーン (火曜日, 29 9月 2015 06:36)

    「シレット」…、博識なしまむらさんの最新情報かと思いながら、エッセイの扉を開きました。

    あんなに「シレット」できたら、楽なのになぁと思うコト多いです。
    いやいや、他人から見たら、私もそうなのかもと、反省もしました。

    それにしても、エッセイへ導いてくれたFacebookの写真、綺麗ですね。
    なんとも言えない月と、月に照らされたゴールドの海面。

    秋…、とっても物悲しく、淋しくなる時があります。
    また、エッセイで、元気をもらえたら嬉しいです。

  • #2

    フェアリー (火曜日, 29 9月 2015 06:03)

    おっしゃる通り!
    さすが ソング・ライター
    “しまむらかずお”さん。
    日本語は、日本特有の文化で、慣用句もいろいろあって、細やかな心情や、景色を伝える、相手に思い浮かばせる事が出来るってすごい事ですよね。
    確かに、しまむらさんの歌に励まされ、考えされる時もあり、ホッコリする時もあります。
    「今日はこの曲 気分♪」
    なんて選ぶ時もあります。
    言葉って、人を大切にする役目もありますものね。
    言葉豊かな、心豊かな人になりたいですね。
    最近ヤバかったかも…あ!
    m(_ _)m

    お月様今夜は見れるかな?
    Facebookで海にも映る素敵なお月様を、見せてもらったけど、
    今夜は「生」で見れたらいいな。
    しれっと半月になる前に!

  • #1

    みゅ (火曜日, 29 9月 2015 06:02)

    さあて、今回も
    シレットと、感想を書いて……

    最初、「シレット」

    最新型のトイレット
    って、それってオシュレット?!
    って、思った私は……
    (*´Д`*)あぅ

    最近の言葉使い
    たしかに、かずおさんが
    言うようヘンテコな言葉ばかり。

    今の子供や若い世代って
    本より、ゲームですもの。
    ((((*゜▽゜*))))

    変な言葉ばかりが
    世の中に反映しそうですね
    。゜+(。ノдヽ。)゜+。

    さてさて……
    シレットと、消えましょうかね(笑)

62-〇〇期

 

第62話 「○○期」  by しまむらかずお

 

 

世の中はシルバー・ウイークの真っ最中。

5月のゴールデン・ウイークに対比して、こう呼ぶのだそうだ。

アタシの場合は、毎週がシルバー・ウイーク。

または、サンデー毎日ともいう。

こんなケッコーなご身分になったのは5年前。

42年も働いたご褒美なのだ。

 

とはいえ、みんながお休みの時、私はヒマなのだ。

みんなそれぞれ家庭があり、家族があり、用事がある。

こんないい天気なのに、どこにも行かない、誰も来ない。

なんだか詰まらないシルバーである。

 

昔の連休は忙しかった。

たまのお休み、どこかへ連れてって、と

袖を引っ張る子どもたちをワゴンに乗っけて出かけたもんだ。

けれど、日本全国連休真っ最中。

どこもいっぱい、道路も渋滞。

行く先々で人もいっぱい。

疲れまくる。

 

それでも、「行ったぞ」という実績が大事。

そんな思いをして連れてったいくつもの場所を

彼らは憶えてくれているだろうか。

そんな彼らは、今やその実績づくりに汗を流していることだろうと思う。

昔と違って、写真も動画も撮りまくる昨今。

きっといい実績がいっぱいあることだろう。

 

そんなふうに人には、活動期というものがある。

時間を惜しんで、動き回る時期。

世界が広がり、出会う人が増え、ずーっとなんかやってる時期。

私にもあの頃、もしもFacebookがあったら

いったい何人の友だちをゲットしていたか分からない。

 

先日、次男に二人目の子どもが生まれ

その女の子の写真がFacebookUPされた。

それも名付けられた名前の紹介とともに。

その名前をFacebookで知る、というのも今風だ。

すると、200人もの人たちからお祝いのコメント。

すげー、奴は活動期真っ最中なのだ、と実感した。

 

さて、するてーと、今のアタシはナニ期?

ジュラ期…違うよね。
休息期、安静期…違うなあ。

なんかビタッとくる名前はないのかい!

 

ちょっと前、健康保険の名称を「後期高齢者」と名付けた厚労省。

世間から大きな批判が巻き起こった。

「後期」とは何たることか、その次は「末期」か!

今の社会を作ってきた先人たちに、何と失礼なことか!

…そのとおりだと思う。

 

ところが、その名称は、直されもせずに

シレッとそのまんま実施されている。

「民の声」は、永田町にも霞が関にも届かない。

…このところ、余計にそう思う。

あれほど国会前で毎日、沢山の「民」が詰めかけていても

その声は届かない。

ま、聞こえないフリをしているだけだろうが。

そんな「耳を貸さない」姿勢はきっと、後でシワ寄せが来る筈だ。

しかし、そのシワ寄せが民のほうにだけ来そうで

何だか嫌になる。

 

そんな彼らはナニ期なんだろう。

けっこういいお歳だと思うけど、

でも、ご本人たちはいたってお元気で、

自分は間違ってない、と確信しているご様子だ。

するてーと、固執期?

それとも、第三反抗期?

 

その昔、社会教育の講座で

高齢期の3つの特徴というのを聞いたことがある。

誰だって歳をとると、

体も考え方も「固くなる」。

そして、「くどくなる」、そのうえに、

髪や歯が抜け落ちて、「汚くなる」というのだ。

だからこそ、歳を取ればとるほどに、

身だしなみも、心の内も、常に奇麗にしてゆく努力が必要だ。

とのことだった。

 

高齢期は、間違いなく、誰にだって訪れる。

体も動かしていないと固まってくるように、

動きを止めないでいなければならない。

「年寄り笑うな、ゆく道じゃ。」という言葉もある。

「若者笑うな、来た道じゃ。」なのである。

 

若さが未熟の意味ならば

年をとれば成熟期と呼べるはず。

歳かさだけ増してもダメだろうけれど、

いくつになっても活動期、そうありたいものだ。

 

今日の話題、何だか年寄りっぼいなあ。

敬老の日だから、しょうがないかあ。

ご長寿バンザイ! 皆さんもどうぞお元気で。

(2015.9.21)

 


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コメント: 5
  • #5

    実香りん (水曜日, 23 9月 2015 14:23)

    今私は、活動期?でしょうか?この前病院より復活し、リハビリのついでに家族サービスしてもらってます。私も、いつか来る成熟期、しまむらさんさんのよあにいつまでも夢をおいつづけていたいです。

  • #4

    月のうさぎ (火曜日, 22 9月 2015 22:49)

    な〜に言ってるんですか!
    成熟期をカッコ良く颯爽と
    過ごしてくださいよ。

    ♪いくつになっても
    恋は恋 ♪

    島村さんから生まれる歌から
    活動期の原動力をもらってるんですから!

  • #3

    フェアリー (火曜日, 22 9月 2015 12:17)

    将来を、“優雅期”って呼べたらいいなぁ。
    「〜を、しなくちゃいけない」時期が長過ぎて、自分がしたい事を考える間も無い日々を過ごして来たら、
    「おはよう 私!今日は何をする⁈」って考えるだけで ワクワクします。

    その時を楽しみに、今は
    ・気持ち良く共に過ごせる友
    ・ご飯を食べるのに困らないだけの小銭
    ・健康な身体
    の準備期かな?
    って思えるのも、尊敬したい人生の先輩の生き方を見させてもらってきたからですね。
    ありがとうございます(*^^*)

  • #2

    ゆう (火曜日, 22 9月 2015 08:34)

    なかなか、辛辣ですね。
    ふわっとご家族のことから・・・よく読むとしっかりと今の世相に対するご意見も書かれております。

    最近は仕事に追われて活動できなくなっています。
    仕事の中で、毎年年を取ることで、若くなっております。
    現在、51歳になりました。来年は50歳、間もなく40代になります。
    さあ、将来は何をしようかな?

    まだまだ夢見る乙女です。
    恋を求めて旅もいいですね。
    人生学を学ぶ大学生活も視野にあります。

    さあ、次の定年まで、新しい出会いを求めて仕事ですぞ!!

  • #1

    ぴあの (火曜日, 22 9月 2015 07:42)

    成熟期目指して、活動、頑張ります。
    まずは、実績作りに、出かけてきま~す。

61-名刺


第61話 「名刺」  by しまむらかずお

 

  

名刺を作り替えた。

たまたまショップで見つけた、

シルバー・パールの用紙が気に入って、

買ってしまったからだ。

 

それにふさわしい名刺にしようと作り始めたが

なかなかうまくいかない。

名刺に入れる情報量、要は文字数が多すぎて、

ゴチャゴチャしてしまうのだ。

なかなかカッコよくならない。

 

別にかっこよくなくても、名前と連絡先さえあれば

名刺の役割は全うできる。

でもさあ。

やっぱりカッコいいのがいいだろう?

女子だったら、可愛いのがいいだろう?

そうだよ。男子はカッコつけてナンボなんだよ。

 

見栄を張り、大きく見てもらいたい、

ちょっと背伸びして、好印象に、

本当はめっちゃ売り込みたいのだけれど、

楚々と控え目に見せて、でもちゃんと主張はして

しかもちょっと個性的で

私の場合はやや若ぶって…

な、ややこしいだろ?

 

どうしてこうも、カッコつけたがるんだろうねえ。

本当にカッコいいお方は、名前だけ書いてたりして…

(名刺の役が果たせんじゃん!)

ま、とにかく、オトコちゅうもんは、

何とか自惚れを保ってないと生きられぬ動物でしてね。

それがなくなると、まるで風船から空気が抜けたみたいに

ちっちゃく、弱っちく、トボトボと、あてもなく彷徨うものなんだぜ。

実体は威張るほどのものでなくても、

偉そうに、または胸を張っていないとダメになるんだぜ。

要は魅力も迫力もない、しょーもない奴になるんだ。

 

実はそんなこと、オンナたちにはバレバレなんだろうねえ。

それが分かってて、「あんたじゃないと」とおだてたり、

「私、あなたがいないと…」と、もう死んじゃいそうな表情を浮かべたり、

ときには甘えたり、叱咤激励したりして、

様々な手を使って、コントロールしているんだろうなあ、多分。

 

それはオトコだって、うすうす感づいてはいるけれど

そこは、おだてに乗りやすく、お調子もんだから、

「そ、そうかあ…そんなにお前が言うのなら…」って、

頑張っちゃうんだよなあ。

 

「オレは九州男児だ!」なんて、真顔で威張られても、

それは九州のオンナたちが、持ち上げてくれてるだっけ。

九州のオンナたち…こうひとからげにして申し訳ないが、

ウマイ!

ぜひとも、高知のオンナたちも、そうしてほしいものだ。

え? なに?

今、フンって声が聞こえたけれど。

 

今の私のお仕事柄、

その主力である、女性たちを敵に回す訳にはいかない。

特に高知のオンナの方々様には。

…この話、これぐらいにしておこう。

…できれば聞かなかったことにしてくれる?

よろしくでぇーす。

 

 

名刺には、顔写真を入れている。

顔を憶えてもらいたいからなのだが

この写真選びも難しい。

いい写真がないのだ。

 

私の写真は、ほとんどがライブ中のもの。

にこやかに笑ってピースするものなんぞない。

たまにあっても、それは決まって飲み会の写真。

使えん!

ライブ中って、とんでもない形相で歌っている。

眉をしかめてたりもするが。

ほとんどが目を閉じて心を込めて…

というより、目をあけてても、もともと細い目。

哀しい。

 

そこで、せめて笑顔の写真を探す。

これもまた、数少ない。

難儀。

 

その点、オンナたち、もとい、女性の皆様方は

笑顔づくりがお上手で、

こちとらあ、しっかりとダマされますわあ。

ものすごく性格まで良く見える…

そんな撮られ方されますよねえ。

感服。脱帽。最敬礼。

 

それも訓練のたまものなんでしょうねえ。

女性たちは、日に何回ほど、鏡をご覧になるのでしょうか。

ボクなんか、えーと、朝の歯磨きと、夜の風呂での髭剃りの時と、

それから、えーと、トイレでチラッと、ぐらいかなあ。

多分、人からは、ムッとして見えたり、怒っているように見えたりしてるよね。

そう、人様に見せる表情の訓練は、大事だよねえ。

ちょっと頑張ってみようかなあ。

まるで定番の、「形状記憶合金」のような笑顔だとしても、

必要だよねえ。無表情よりマシだよね。

 

ま、この顔と長~い間付き合ってきているんだから、

いい顔のひとつぐらいマスターしようかな

そうしようっと。

そんなとこ、目覚めの遅いボク。

 

名刺というのは、「肩書」も大事。

コームインの頃、私はいつも2種類の名刺を持っていた。

職場・職名を書いたものと、もうひとつ、

「ミュージカルRYOMA」とか、「やさしくなろうネットワーク」とか、

「劇団Kちゃんねる」など、その時やっている活動のポジションを

肩書にしたものだった。

 

考えてみれば、いつももうひとつの肩書を持っていた。

「二足のワラジ」という言葉があるが、

私の場合、ワラジは一足だった気がする。

どちらの足も自分の足だったと思えるのだ。

 

「ケンケン」という遊びがあるが、

ずっと片足でケンケンだと疲れ果てる。

だからたまには、「パッ」と両足を広げる時が必要だ。

私にとって、その「バッ」は、仕事以外の世界。

実はその「パッ」の時間が一番安定していた気がする。

 

ほかの皆さんはどうなんだろう。

仕事以外の世界は、「家庭」?「家族」?

…自営業で家庭と職場が一緒の方もいるよね。

それとも「趣味」?「スポーツ」?

…それだって、職場の人たちと一緒にするのもあるよね。

みんなどうなんだろう。

 

オレって、趣味とはいえないほど

つつましくはない活動だったからなあ。

…と、いうことは、例の「パッ」のとき、

家庭を顧みてないということになる。

…ま、その通りだわさ。

ご家族の皆さん、ごめんなさい。

今更ですが、恩返しでも、罪ほろぼしでも、何でもしますから、

どうぞ許してやってくだせえ。

 

とはいえ、今もあんまり変わってないなあ。

今や、「パッパッパッ」だからなあ。

…ま、そんな奴なんです。

すんません。

 

せめて、私の音楽やその他の活動が

ほかの皆さんの「パッ」となれるよう、

元気になったり、励まされたり、癒されたりされるよう、

精一杯やりまする。

私のできることで。

2015.9.12

 


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コメント: 5
  • #5

    土佐のおんちゃん (木曜日, 17 9月 2015 17:26)

     前作品?の3D立体名刺もなかなかのものでしたが、今回の作品にも期待が大!
    しかし、満面の笑顔写真のかずおちゃんお名刺はちょっとびっくりかも
    でも、早くお目にかかれるのを楽しみにしています。

  • #4

    sakura (日曜日, 13 9月 2015 11:47)

    名刺って大切ですよね。
    初めましてのご挨拶ツール。

    「人は出会って何秒かで印象が決まる」と言うのを聞いた事があります。

    そんな急に分かるはず無いやん。と思いつつ、やっぱり笑顔の練習した方がいいのかな?

    相手の手元に残る 「自分」こそ
    素敵な笑顔を残せたらいいでしょうね。
    と、ちょっとプレッシャーを
    かけてみる (*^^*)

  • #3

    フェアリー (日曜日, 13 9月 2015 11:30)

    “はちきん".に、そんな事求められてもねぇ。
    とは言え、女は出会った男で変わるといいますよ。

    角隠しをして可愛いお嫁さんだったのに、子どもを産んで、生活に追われて、一生懸命日々過ごしてしていたら、いつの間にか…

    上手に「パッ」の時間を持って、いつまでも 笑顔の可愛い女でいられたらいいなぁ。

  • #2

    あっぷる (土曜日, 12 9月 2015 12:38)

    名刺、見られるのを楽しみにしています(^^)

  • #1

    ぴあの (土曜日, 12 9月 2015 12:27)

    しまむらさんの歌に、言葉に、笑顔に、
    いつも元気にしてもらって、励ましてもらって、癒されてます。

    名刺。カッコいいのができたら、欲しいな。